華氏451度 - レイ・ブラッドベリ/宇野利泰 - 小説・無料試し読みなら、電子書籍・コミックストア ブックライブ
「本」が禁じられた世界、焚書官モンターグの仕事は、本を見つけて焼き払うことだった。人々は超小型ラジオや大画面テレビに支配され、本なしで満足に暮らしていたのだ。だが、ふと本を手にしたことから、モンターグの人生は大きく変わっていく……現代文明に対する鋭い批評を秘めた不朽の名作。
「世の中に本がなくても困らない」「本を読まなくても平気」な人がいる(このサイトにはいないだろうけど)。そういう人だって情報はないと困るし、ネットニュースやSNSやTVなどで収集しているだろう。この小説で書かれる「書物」と「TV」は情報を得る媒体として何が違うのだろうか? 一つは読書という行為は受け身の人には敷居が高いということにあるのかも。ネットやTVは受け身でも何とかなるが、読書は受け手が何らかの「問い」を持たない限り、行為が発動しないという不親切さがあるのだと思う。この作品で燃やされる書物は、人間の「問い」の直喩であり、その背景にある「知性」のことだと締めくくられている。読む前はもっとシニカルでアイロニカルな文明批評なのかと思いきや、かなり作者の危機感や怒りが率直に感じられて意外だった。ちなみにこの作品で人間を無思考状態に陥らす「壁テレビ」は、従来のテレビではまだ生ぬるかったが、ほぼほぼ今のスマホで代替可能になった。スマホはTVと違って10時間を超える利用も可能。「考えるための余暇」も確実に奪い得るのだから。